筆者のトレードについて

他人の手法を知ることは、「答え」にはならない。トレードをスポーツに例える人間は多いだろう。あるいは、ポーカー。野球で例えるならば、バッティングのフォームをイチローから教授してもらい、それをそのまま実行すれば、メジャーリーガーの投げる剛速球を打てるのか、という問いに、「打てる」と答える人間は居ないはずだ。しかし、何も知らない状態で彼らの投げる球を迎え撃つよりは、イチローの教えを受けた者のほうが有利であり、また、彼らの球を打てるようになるまでの期間にも違いが出てくるかもしれない。
作家を志す若者に私がまず、云うことは「尊敬する作家の文章をノートに書き写しなさい」ということだ。まず真似をする。その存在を知ることが大事である。トレーダーも同じだろう。

まず、尊敬するトレーダーを見つけて、そのトレーダーの言葉を、行動を真似することだ。幸いFXにはデモトレードという格好の練習場がある。小額で取引をしても良いだろう。とにかく、結果を気にせずに真似をすることだ。そして、それを記録すること。トレード結果だけでなく、感情を記録すること。慣れないうちは湧き出た感情を看過してしまうかもしれない。その場合はボイスレコーダーを片手に(スマートフォンでも良い)声で記録すればいい。自分がどのような状況で、どのような種類の感情を抱くのか記録をする。

では、筆者がトレーダーとして、真っ暗闇のトンネルを抜けるために採用した手順の一つを名刺代わりに紹介してみよう。
その前に、まず自分がどのようなトレーダーなのか、定義が必要である。これから述べる例は私が定義したトレーダー(投機家)のあり方としてのトレード方法である。
私の定義とは、1ヶ月に同一通貨、同一時間足、同一ルールで取引を200回(最低でも2ヶ月で200回)である。
まず、これに当て嵌まる条件として「足」だが、これは5分足となった。ルールはブレイクアウト。
ブレイクアウトの条件は何でも良い。過去1時間の高値安値を1pip抜けたらエントリーでも良いし、30分でも良い。終値で抜けるのを待っても良い。とにかく条件は何でも良い。ただし、上記で述べた条件、一ヶ月で200回を忘れないように。一ヶ月に200回を想定すると、例えば過去4時間の高値安値のブレイクを狙うルールと決めた場合、おそらくチャンスが少なくなり、200回に到達できないだろう。
ストップは直近の高値安値に置く。この「直近」の条件も何でも良い。ただし、ストップを変更するようなルールはNGだ。一度置いたストップは決して変更してはいけない。

次に、利益確定の目安ラインとしてストップと同じ幅をみる。これでリスクリワードが1対1となる。この状態で、勝率はほとんどの場合、50%前後になるだろう。もちろん、バックテストをおこなって勝率をきちんともとめる。バックテストの期間は5年でも10年でも多いほうが良い。また、手作業でチャートを進めながら行うこと。5分足なので膨大な時間が必要になるだろう。
バックテストをはじめる前に、利益確定のルールを(RR1ライン以外で)何でも良いので作っておくこと。時間で切り上げるトレールでも良いし。MAやボリンジャーバンドなどのテクニカル手法をひとつ用意しても良い。とにかく、何でも良いので一つ作ること。この利益確定のルールの調整によって、取引ルール全体の洗練へ繋げていくことになる。
市場時間別に記録をとる必要もある。

バックテストが終わり、期待値がプラスのルールが完成したら、その記録を片手に、リアルタイムで動くチャートで取引をする。とりあえず200回(一ヶ月)やってみる。結果がプラスならば続行。バックテストの結果から乖離があるならば、ルール変更を検討する。(ほとんどの場合、バックテストに近い値になるだろう)ルールを変更したらもう一度バックテストを行う。

ここまで述べたことを、実際に実行できる新米トレーダーは、おそらく5%もいないだろう、と想う。理解できただろうか?つまり、逆説的にいえば、上述したことを素直に、しっかり実行できれば、新米トレーダーのなかで上位5%に入れるのだ。(5%という数字を裏付けるデータはないが、経験的な根拠はあるので信じてもらえれば幸いである)

ストップと利益確定についてだが、ストップを置くこと(損切すること)というのはできて当たり前。これから「サッカーをやろう!」となったときに、とりあえずゴールキーパーは必ず配置するだろう。それとまったく同じである。世間では「損切ができた自分を褒めてあげたい」などという世迷い言を発信するトレーダー気取りの勘違い者が多いが、そもそも損切というのはできて当たり前、スタートラインである。損切しなければ必ず「損」をする、ということをトレードをはじめる前に理解する必要がある。サッカーでゴールキーパーが必要ない、などという戦術はあり得るだろうか?おそらくあり得ないのではないか。
次に、利益確定だが、これは「答えはない」ということを理解する。それだけである。「投機において一番難しいのは利食いだ」と言う者が多いが、そんなことは当たり前というか、そもそも答えがないのだから「難しい」という感情を抱くこと自体がズレている、と云える。

では、実際に直近のドル円でのトレード例を載せてみる。
以下の図は、スクリーンショットを撮った場面=注文タイミング(決済タイミング)である。
実際には操作の時間のため数秒のズレがあるが。

 

まずは損切の場面。

 

よくみる光景である。

 

ここから、ルールに従いドテンをする。(ブレイクアウトルールのため)

 

利益確定をした場面である。RR1のラインでの利食いはルールに従い見送った。
初心者はRR1のラインで利益確定しても良いだろう。ただし、それだけを繰り返していては、最終的な勝ちは望めない。利益確定という行為のなかにはシステムと裁量のせめぎ合いがある。システムと裁量のバランス感覚の要求こそ、利益確定に求められる正しい姿勢だと考える。RR1ラインで利食いする場面もあれば、利を伸ばす場面もある、理由はそのときによって異なる。この曖昧さを、不安定さを受け入れることがスタートラインである。

 

次は、利益確定がうまくいかなかったパターン

 

利益確定に正解は無い、ということがよくわかる例だろう。
RR1のラインに到達後、そこから利を伸ばすために待ったが、伸びなかった。決済のルールに従い画像の場面で決済をした。
「RR1のラインで利益確定していれば、良かった。しかしそれだと、一つ前の例では利益が少なくなる・・・。」こうやって初心者は隘路に陥るのである。正解などは無い、と理解していれば、このような場面でも心が揺さぶられることは、基本的には、ない。

 

次は、もう一度うまくいったパターン。

 

利益確定の場面である。

 

このようなトレードを月に200回、同一通貨で行う。(私の定めたルールの場合は勝率は55%前後で推移している。ドル円では1トレードにおける期待値はプラス3pipである。条件が違っても、ほとんどの場合、似たような数字に収まるだろう。ルールを洗練させることによって勝率は上がったり下がったりを繰り返して、長期的にみると少しだけ上がっている)もちろん、他の通貨にも手を出すので、その数は膨大なものになる。はっきり言って、このようにひとつひとつのトレードを振り返るヒマはない。一つのトレードに対して何らかの感情を抱くことも基本的には、ない。そんな思考を持つ余裕など与えられない。とにかく、数をこなす。200回やれば、その取引ルールの価値がみえてくるだろう。期待に応えない結果ならば、捨てるしかないだろう。また違うルールをつくり(バックテストを経て)200回やれば良い。大抵の場合は、その過程で、相場の(この世界全体といったら大仰かもしれないが)仕組みがみえてくるはずだ。「ここを、こうすれば良いんだな」という感情に出合えるはずだ。そうなれば、晴れて、新米トレーダーから卒業である。