トレードにおけるメンタルコントロールについて

トレーダーの批評をしていて想うのは、多くのトレーダーが、メンタルコントロールの重要性をしきりに説いていることだ。たしかに、メンタルコントロールが可能になったら、それはトレーダーにとってとてつもない武器になるだろう。しかし、残念ながらほとんどの人間は、メンタルをコントロールしようとしても上手くはいかない。訓練でどうにかなるものでもない。それは持って生まれた才能である。才能がないのに、それを手に入れようと試みることほどイノセントな行為はない。自分の内に発生しようとする感情を、自由に操作しようなどというのは、ひとつの特殊能力である。
信じられないことに、その特殊能力を新米トレーダーに手に入れるべきだと説き、丁寧に、平易に「ここをこうすれば良い」と書き連ねるトレーナー気取りのトレーダーがこの世界に溢れているのだ。
もし、そのような特殊能力を後天的に手に入れたいと考えるのならば、信じられる宗教(教祖)をみつけて出家しなさい、と私は云いたい。5年10年程度の修行では身につかないだろう。30年はかかるのではないか、と想像する。

では、トレードにおいて、メンタルという分野に対しどのような姿勢をとるべきか。
トップアスリートである、松井秀喜の言葉を引いてみよう。

甲子園で5打席連続敬遠を受けたときも、僕は打席の中で「1球でも好球がきたら必ず打ってやる」と自分に言い聞かせていました。プロに入ってからも、相手投手はボール球を使って勝負してきます。ボール攻めにイライラしたら自分の負けです。
いや、人間ですからイライラするのは仕方がないでしょう。しかし、態度に出さない、口に出さないことはできます。態度や口に出してしまうと 気持ちが乱れ、バッティングが乱れ、自分が苦しむことになる。
そして、乱れたバッティングを修正するのは、とても大変で苦しい作業なのです。だから、僕は少しでも乱れる可能性がある行動を慎もうと考えています。

(松井秀喜)

この科白からわかることは、トップアスリートである彼も、メンタルコントロールに関しては、はじめから諦めているということである。「イライラ」することは、防ぎようがないと経験的にしっかりと理解している。「イライラ」しないように努めるのではなく、「イライラ」してしまう自分の未熟さを受け止め、それをどのように「処理」するのか、予め対応を考えている。突発的な現象に仕上がる前に、予定調和的な現象へと導く。トレードもまったく同じである。
損をして、イライラするのは当たり前である。このイライラという感情の発生をどうにかしようとするのは、思い上がりである。それを防ぐのではなく、その確実に訪れる感情に対してどのように向き合うのか、自分の中で答えを持つことが重要である。

バッティングの修正に関しての思想も、トレードに通ずるところがあるだろう。